企業参謀/大前研一

初版が1985年と30年近く前の本であったが、今でも多くのビジネス書レビューで紹介されており、今回手に取って読んだ。

この本は著者がコンサルティングファームのマッキンゼー社での経験をベースに企業において、戦略的に物を考える方法を教えてくれている。

目次の内容に沿って、主な主張をまとめてみると、
・あいまいな物事は分析し、本質を捉えることで、その問題点や解決策に繋がる。
・様々な物事において、物事の本質を捉えるためには、定跡となるプロセスがある。
・上記の思考法を応用した企業戦略の立案方法
・上記の思考法を応用した国政の考え方
・戦略的思考を行うために、取り除かなければならない考え方。

のようになっている。

この書籍では、一般論の戦略としてよりは、実態に即した具体的な例を用いながら戦略論を述べているが、
その主張の根幹となる哲学は共通しているように感じる。これらの戦略論は幾分精神的な心構えも含んでいる。
ここに、私が特に重要と思われる戦略的思考のためのポイントを抜粋した。

・混然一体としたものは分解する。
・分解する方法にもいくつかのパターン(PPM、)がある。
・問題点を洗い出すのは、現象に着目する。
・将来的な予測をする場合には、仮説を設定する。
・複数の選択肢がある場合には、すべての仮説を綿密に検討する。
・仮説を立てたものに対しては、実証後検証する。
・検討や、事後検証など、数字や結果などあらゆる物に対して、「なぜそうなるのか」という問いをしつこい位やる。

これらの考えを5つにまとめ、筆者の考える「参謀5戒」が最終章に紹介されている。

1.参謀たるもの「イフ」という言葉に対する本能的恐れを捨てよ
2.参謀たるもの完全主義は捨てよ
3.KFSについては徹底的に挑戦せよ
4.制約条件に制約されるな
5.記憶に頼らず分析を

この5つには、戦略的思考を行うための筆者のエッセンスが詰まっていると思う。

特に耳が痛いと感じたのは、5つめであり、我々日本人の思考における2つの欠点が挙げられている。
それは、「分析力」と「概念を作り出す能力」がかけている可能性であるという。

日本人は、欧米の物を真似することで成長して来た。そして、多くの問題はすでに、海外で解決済みの問題であり、
我々自身でそれを考える必要がなかった。
また、教育においては、暗記するこそが最も重要であるという教育が、分析や論理的な思考、自由な発想を阻害している。
という。

1つめのイフへの恐れを捨てろとあるが、そもそもそういった仮定を我々がうまく行えないのも、
そういった空想的な考えをこれまでやる訓練をしてこなかった(または、避けていた)のかもしれない。

4つの目の制約についても同様である。なにか問題があった時、どうしてその問題を解決出来ないか、その制約となる条件を我々は仮定としても取り除くことが出来ていないのである。

順序がばらばらだが、3つのKFS(Key Factor of Success)についても、成功するための要因についても、分析し、見込みを立てる重要性を主張している。
これも、想像力や分析力、仮定を設けることが紹介されている。

最後に、こういった思考に取り組むためには、日常的に思考のトレーニングをする必要があることを示している。
個人的に重要なのは、上でも述べたように、分析をしつこく行い、概念を生み出すことと感じている。

30年前にかかれていても、その戦略的思考論は一切古びたものを感じない。
頭を使う必要がある仕事をしている人には共通して重要な考え方であると思うので、是非読んで欲しい。